2015年9月21日 味わい深きドイツレンズ
2015年 09月 21日
ベアさんたちが眺めているクラシックなカメラは・・・私が愛用しているフィルムカメラです。
左側の小さいカメラが35mm判のRollei 35で、右側の二眼レフが中判6x6のRolleiflex Automat MXです。
どちらも40年以上前にドイツで設計された古いカメラですが、いまだによく写り、私の銀塩フィルム写真ブログでの登場回数も多いです♪
レンズはそれぞれ、ドイツの名門光学メーカー"Carl Zeiss"が作ったTessarが付いています。
テッサーは3群4枚構成のレンズで、F値は明るくないもののハイコントラストでシャープな描写で有名、「鷹の目テッサー」と呼ばれていたそうです。
Rolleiflex Automat MXの搭載レンズは、Zeiss-Opton Tessar 75mm F3.5です。
この時代のRolleiflexのTessar、東独の本家本元Jena製と西独に移転したOpton製の2種類があり、後者は描写がやや甘い、と聞いたことがあります。
でも、私のAutomat MXのテッサーの描写を見ると、Tessarらしい十分なコントラストとシャープネスを感じる写りだと思います。
Rollei 35の方は、ローライ社がツァイスのライセンスの元で自社制作したTessar 40mm F3.5で、こちらも負けず劣らずのカミソリの切れ味です。
さて、こちらの二眼レフもローライ社製で、Rolleiflex 2.8Cと言います。
こちらについているレンズもドイツの名門レンズメーカー、Schneider-Kreuznach社が作ったもので、Xenotar 80mm/F2.8と呼ばれています。
クセノターは、かつて日本の光学界に「クセノタール・ショック」をもたらしたことで有名な、とてもよく写るレンズですね。
ダブルガウスのPlanarタイプほど明るくできませんが、ダブルガウスの前群とトポゴンの後群を組み合わせたことにより、非点収差、像面湾曲や歪曲収差などを良好に補正できる解像力の高いレンズ構成だそうです。
Rolleiflex 2.8系には、Carl Zeiss Planarの付いたモデルと、このXenotarの付いたモデルがあり、描写が微妙に違います。
同じF2.8でも、Planarの方が柔らかで妖艶、Xenotarの方が繊細でシャープだ、と言われています。
なお、背景にぼんやりと写っている二眼レフはRolleicord Vで、これもシュナイダー・クロイツナッハ製のレンズ、Xenar 75mm F3.5を搭載しております。
このクスナーはテッサーによく似た3群4枚構成のレンズですが、写りの雰囲気は若干テッサーとは異なります。
Tessarほどシャープさを前面に押し出した写りではなく、もっとしっとりとして線が細い、シュナイダー・クロイツナッハ特有の写りをします。
さて・・・こちらのベアさんが吟味しているレンズには・・・LEICAの名前が入っております。
ライカ・・・そう、こちらもドイツの名門光学メーカー、エルンスト・ライツ社のブランドだったライカ銘のレンズなんであります♪
実際に作っているのは日本のパナソニックなので、通称「パナライカ」などと揶揄的に呼ばれていますが、ライカの定める製品特徴や品質をクリアしているので、ライカの看板を背負っても問題ない製品に仕上がっています。
レンズの名前は、Leica DG Summilux 25mm/F1.4です。
マイクロフォーサーズ用の標準レンズです・・・M.ZUIKO 25mm F1.8が相方専用となってしまったので、私用に手に入れたレンズですね。
最近このレンズにはまってしまい、ず~っとこのレンズで撮った写真ばかり上げています・・・標準画角だし、開放F値が1.4と明るいので使いやすいんです♪
ツァイスやシュナイダーは、レンズの形式でレンズ名を付ける流儀ですが、ライカではレンズ名は開放F値で決まるようです。
F1から1.2はノクチルックス、F1.4はズミルックス、F2はズミクロン、F1.5はズマリット、F2.8はエルマリート、それより暗いレンズはエルマー・・・
ちなみに、このレンズはF1.4ですからズミルックスなんであります。
さて、我家のマイクロフォーサーズの標準焦点域のレンズを並べてみました。
右の小さなパンケーキタイプはLumix G 20mm F1.7、真ん中はM.ZUIKO 25mm F1.8、そして左がLeica DG Summilux 25mm F1.4です。
35mmフルフレーム機の焦点距離で言えば、25mmは50mmに相当する標準レンズ、20mmは40mmに相当する「広めの標準レンズ」ですね。
こうしてみると、大きさがかなり違います・・・20mmはパンケーキと言うより「今川焼」って感じですね。^^;
で、Summiluxは、Zuikoよりかなり大きいです・・・その大きさの差はどこにあるのか・・・
せっかく2本の25mmが手元にあるので、三脚を立ててガチな比較撮影実験をやってみることにしました。
上は、Leica DG Summilux 25mm F1.4の絞り開放で撮ったものです。
上は、M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8の絞り開放で撮ったものです。
ん?よく似ていてわからない・・・?
はい、それが当たり前だと思います・・・焦点距離は同じ25mm、絞りもF1.4とF1.8と、2/3段しか違いませんから、そんなに大きな違いはありません。
2/3段の違いというと、マイクロフォーサーズとAPS-Cの違いとほぼ同じですね。
この2種類のフォーマット、同じ画角・F値でボケの大きさの実験をやったことがありますが、ほとんど違いがなかったので、まあ順当な結果じゃないかと思います。
なお、画角は若干ながら違うようです・・・ズイコーの方がやや広角気味に写りますね。
さて、拡大してみました。
こうしてみると、同じ25mmでもかなり違いがあるのがわかります・・・上の写真、左がSummilux 25mm F1.4、右がM.Zuiko 25mm F1.8です。
明らかに左側のSummiluxのほうが柔らかくボケも大きく、立体的に見えます。
シャープネスはどちらも絞り開放からシャープですが、意外なことに、より大口径なSummiluxの方がややシャープな気がしました。
こちらは絞り開放時のボケの描写の違いです。
2/3段の違い、それなりです・・・Summiluxのほうが柔らかで大きなボケが出ており、うるさくない感じがします。
レンズの味付けの違いを見るために、M.Zuiko 25mmのF1.8と同じF値のF1.8までSummiluxを絞って比較してみました。
軽く絞っているせいもあって、Summiluxののほう確実にシャープですね。
また、フォーカスがあっている部分とアウトフォーカスしている部分の先鋭度のギャップが大きいように感じます・・・剃刀ピントって、奴ですね。
収差がが残っているからでしょうか。
ズイコーのほうはそこまでフォーカス面とアウトフォーカス面の乖離が目立っていないように感じます。
しかしトーンの階調を見ると、Summiluxのほうがブロードでフィルムっぽいです。
M.Zuiko 25mmのほうが階調のコントラストが強く、デジタルっぽいです・・・明暗差が大きいせいで、ボケがうるさく感じます。
うむ・・・「ズミルックスは立体的に写る」と巷間でよく言われていますが、その秘密はこのあたりにあるのかも。
昔、「Carl Zeiss Planar T* 1.4/50はなぜ立体的に写るか?」と言うエントリを書いたことがありますが、そこで行った実験を通して分かったポイントは下記の通りです。
●階調が広くて眠いぐらいのコントラストのほうが立体的に見える。
●ピントの合っている部分とボケている部分の差が大きいと立体的に見える。
●同じF値、同じ焦点距離でも、レンズによってボケの出方は全く違う。合焦部分とボケ部分のコントラストの大きなレンズのほうが、立体的に見える。
今回の25mmの比較でも同じような印象を受けました。
ドイツの名門レンズメーカーのやることは奥が深いです・・・立体感を出すために、意図的に収差を残してるんじゃないでしょうか・・・^^
ドイツのレンズ、なかなかに味わい深いのでありました♪
もちろんM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8だって優秀なレンズです。
小型軽量だし、1万円以上安いし、開放から十分にシャープだし、近接能力は高いし、AFもズミルックスより早いです。
費用対効果を考えるなら、Summiluxより上です・・・でも・・・いわゆる「優等生」なんですよね。
方やLeica DG Summilux 25mm/F1.4は、より妖しい魅力に溢れています・・・不良っぽさがあります。^^;
長年フィルムカメラを作り続けてきたライカの伝統を感じさせる豊かな階調のトーンは、きょうびのレンズにはない奥深い味わいがあります。
絞り開放の柔らかなボケと立体感を楽しむのも良し、絞って鬼のようなシャープさを楽しむのも良し・・・F1.4と明るいので、絞りの変化が楽しいです。
このツンデレなレンズを装着すると、「おーし、今日は気合を入れて写真を撮るど~♪」と言う気分になりますね。
なお、他にも比較撮影を行っておりますので、ご興味があれば下のリンク先をごらんになってください。↓
愛知県みよし市三好ヶ丘にて
Olympus Pen Lite E-PL6
M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
Leica DG Summilux 25mm/F1.4
M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8
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戸外で、より遠方のボケが写るようにして実験してみました。
上はLeica DG Summilux 25mm/F1.4の絞開放で撮ったものです。
パナ製のSummiluxをオリンパス機のPen Lite E-PL6に装着して撮ったので、色収差出てしまいました。
"Harrods"のロゴにパープルフリンジが出ているのがお分かりになりますでしょうか・・・微妙だからわかりにくいかな?
上はM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8の絞開放で撮ったものです。
こちらはフリンジが出ておりません・・・オリンパスボディにオリンパスレンズなので、自動的に除去されたのでしょうね。
また、Summiluxより若干広めに写ります・・・右端の白い看板を見るとよくわかります。
拡大してみました。
点光源のボケの大きさが違いますね・・・F1.4のSummiluxのほうがやや大きいです。
また、全体にSummiluxのほうがコントラストが低くて、トーンジャンプが少ないような気がします。
なお、Summiluxに出ていた"Harrods"周りのパープルフリンジは、は、Adobe Lightroomでちゃっちゃと消してしまいました。^^v
ボケ部分の比較です・・・F1.4とF1.8、2/3段分のボケの差、それなりにありますね。
また右下の落ち葉のボケ、しいて言えば、Zuikoはややうるさい感じのボケになっているように感じます。
上はLeica DG Summilux 25mm/F1.4の絞開放で撮ったものです。
上はM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8の絞開放で撮ったものです。
やはりSummiluxより若干広めに写りますね。
左側のベアの首の赤いリボンを見ると、ボケの質・量の違いがわかります。
上はLeica DG Summilux 25mm/F1.4の絞開放で撮ったものです。
上はM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8の絞開放で撮ったものです。
拡大比較です・・・後方の窓ガラス、Zuikoは格子模様が見えていますが、Summiluxは溶けてしまっています。
ボケの量と質を考えると、やはりF1.4のSummiluxのほうがF1.8のZuikoより、表現力の幅が大きいように感じます。
結論を言えば・・・大柄でちょっと重いですが、魅力にあふれた標準レンズですね、Leica DG Summilux 25mm/F1.4♪